小紙創刊と同時だから、このコラムも25年を超えた。振り返れば4半世紀。男性の平均寿命のほぼ3分の1だ▼個人の発想には限界がある。すでに800回を超え、とうにネタは尽きている。ところが、無知であることが幸いし、年を重ねても見るもの聞くもの新鮮な出会いの連続▼無知をカバーするには「調べ」が要る。お世話になったのは図書館だ。言葉や現象の根拠をたどったり、歴史の背景を調べたりすることに、仕事そっちのけで夢中になった。この年になっても勉強できることに感謝した▼いくつか、自分なりに課していたことがある。週末の休日となる土曜日に辛らつな話はできる限り避ける、話題は広範囲に…などといったことだ▼25年間には、今考えても赤面するような誤りもあり、読者からは、多くのお叱りを受けた。それだけ「向き合っていただいた」と受けとめ、心から感謝している▼来月からの紙面改正でこのコラムも休載することになりました。長期のお付き合いありがとうございました。 (10/06/26)



読売新聞の緊急世論調査では、菅内閣の支持率が64%で、鳩山政権末期の3倍に跳ね上がった。この数字は、今度こそ、過去のしがらみを引きずる「古い政治」とは決別してほしい―という国民の願いだろう▼新閣僚の17人中11人は再任だが、二重権力、政治とカネの不透明感を排し、清新を印象づける陣容だ。世襲ではない「市民派宰相」の登場を世論は好意的に迎えている▼菅首相は「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体として実現する」と宣言した。それを支えるのは大臣。千葉4区選出の野田佳彦さんが、その宣言の要とも言える財務相に起用された。「にっぽんまる洗い」と、行財政の改革を強く訴えてきた。的確な判断で、これからの日本を最善の方向に導いてもらいたい▼国民は民主党に「再起動」の機会を与えた。しかし同時に、この政権党と内閣には本当に政権担当能力があるのか、慎重に見極めようとしている。もう一度お手並み拝見、と。 (10/06/12)


「今日も元気だたばこがうまい」というキャッチコピーの宣伝ポスターを日本専売公社(JTの前身)が出したのは1957年。それから半世紀余、時代の価値観は大きく変わった▼第一生命保険が毎年発表しているサラリーマン川柳の今年の入選作に「喫茶店味より大事な喫煙可」というのがあった。愛煙家には肩身の狭い時代で、神奈川県では今年度から「禁煙条例」を施行、喫煙場所以外での喫煙を禁じるという徹底ぶりが話題になった▼船橋市では04年10月に「路上禁煙及びポイ捨て防止条例」を施行、千葉市や市川市など近辺自治体でも、同様の条例を施行し、マナーを呼びかけている▼そのマナーが徹底しないとして鎌ヶ谷市では、近く、新鎌ヶ谷駅周辺を禁煙区域に指定する▼タバコの害は様々指摘されている。筆者も40年近く喫煙したから、愛煙家の気持ちが分からぬではない。ただ、他人に及ぼす受動喫煙への気遣いはぜひ。6日まで禁煙週間。 (10/06/05)


 帰省から戻った知人にお土産を頂いた。老舗の銘菓だ▼高級感ある和紙に包装され、雑に破るのも気が引け丁寧にシールをはがした。広げると美しい紙で、特に目的はないが、新聞収納袋に紛れさすのもはばかられ、とっておくことにした▼包装紙を開くと、厚紙の箱。次に、菓子を3つに分けた紙箱。さらに大事そうに包んだ和紙を破いて、やっと銘菓にありついた▼多くをゴミにするここまでの過程が、どうも心地が悪い▼さすがに老舗の菓子。味も口触りも優れている。それだけの味なら、何も包装紙で勝負することはないと思ったが、もしかしたら乾燥を防ぎ風味を保つためなのかもしれない。それにしても他に方法はありそうだ▼過大包装は、高級感を出す手法なのだろうが、現代人の味覚や眼力も肥え、見せかけでは立ち行かなくなる▼商品に限らず、学歴、肩書、○×機構、厚化粧…、この国にはなんと過大包装の多いこと。(10/05/22)


  自然界の営みは厳しい。佐渡のトキの卵がカラスに襲われたという▼ニュースによると、襲われたのは、卵を抱いていた2歳のメスが、何かに驚いたように巣を飛び立った後。巣を空けたのはわずか10秒程度だが、どうやらそれはカラスが仕組んだオトリだったようだ▼カラスの巧妙さはよく伝えられる。以前、クルミを割るという仙台のカラスのことが話題になったことがある。カラスが最初に試みたのは空中からコンクリートめがけて落下させる作戦。しかし容易には割れず、何度目かにたまたま自動車がクルミの上を通過するといとも簡単に割れた。以来カラスは車の往来の激しい交差点でクルミ割りをやるようになった▼誰しも、希少なトキが順調に育って欲しいと思うが、カラスにしてもテンにしても、自然界は生きるのに必死。トキも生き抜くために学習し、たくましさを身に付けてこそ真に自然に帰るとき。環境省によると、まだ2組の卵の番があるという。無事にふ化できるとよい。15日から愛鳥週間。(10/05/15)



  涼しさを演出するゴーヤの栽培が近辺で盛んだ。窓や壁伝いにネットを張り、つる植物のゴーヤをはわせることで直射日光を遮り、室内温度の上昇を抑制できる▼「緑のカーテン」として2年ほど前から船橋市内の公民館でも栽培され、温暖化防止の一策として家庭にも普及し始めている▼野菜としてもビタミンや食物繊維が豊富。別名ニガウリと呼ぶくらい苦い野菜だが好む食通は多い。正式和名はツルレイシ。ゴーヤは沖縄方言だ▼人の舌には「味蕾」という味を感じるセンサーがある。味蕾は子どものころは、口腔内全体にあることから、味覚に非常に敏感で、苦味や酸味を拒否する。年齢が増すにつれ味蕾は減少し苦味も受け入れられるようになる。ゴーヤを「苦い、苦い」と感じながら食べ、やがて体の奥からやってくる「スッ」とする感覚。それがクセになる、と食通の知人▼栄養価も高くエコライフにも役立つゴーヤ。自然界には便利なものが多い。5月8日は「ゴーヤの日」だそうだ。(10/05/08)



07年の文科省の調査によると、図書館を利用する小学生は1人約36冊の本を借りていたそうだ。この数字からは、いわれているほど「活字離れ」ではないが、どの世代も読む人と読まない人は両極端で、統計が必ずしも実態を反映しているわけではない▼「ためになるから本を読みなさい」と本を薦める傾向がある。しかし、いかに世間的評価が高い本でも、ためになるかどうかは、読み終わらないことにはわからない。その時の心境や環境で、心に残ったり、そうではなかったりする。無理強いは逆効果だ▼言語学者の金田一秀穂さんは「言葉には人間性を表現する力がある」と語っている。未知の話を知らせてくれ、難しい話を噛み砕いてくれるのが本。知識を得る喜びを知ればまた本を読みたくなる▼12日まで「こどもの読書週間」。行楽に疲れたら、そーっと、1冊の本を開いてみないか。人との出会いがそうであるように、未知の本との邂逅もワクワクする。(10/05/01)



  先週「春に3日の晴れなし」と書き出したが、それにしても今年の寒暖差は極端。束の間の好天に、花の名所などには観光客が殺到したとか▼憩いを求めての行動だが、異常な混雑は、かえってストレスとなる。情報過多の現代社会、快適な行楽には、プランの立て方にも確かな状況判断がいる▼ほどなく、GW。連休期間、意外に心地よいのが都心。筆者は、毎年のように歩くコースがある▼地下鉄大手町駅から皇居東御苑へ。園内は静かで、木立は多く、ツツジ満開の時期▼大手町から都営線で白山駅へ。歩いて10分足らずのところに小石川植物園がある。ひと際めだつのがトキワマンサク。しだれた枝ぶりはみごと。同園で有名なのがハンカチツリー。その名の通り、枝先に付いた白い胞はまさにハンカチ。西側のツツジ園も見ごろになる▼同園から茗荷谷駅へ出て丸の内線で小石川後楽園へ。うっそうとした緑の、都会のオアシスで憩いたい▼休暇の参考になれば幸い。 (10/04/24)



「スライディングドア」という映画があった。ある朝、出社した主人公の女性が突然、リストラにあう。会社を去った彼女は、地下鉄へと急ぐ。開いていた電車のドア。そこに飛び乗ろうとする主人公。映画はここから、その電車に間に合った場合と、間に合わなかった場合の、彼女のその後の運命を巧みにスライドさせながら展開していく▼人生には、選択をせまられる機会が度々ある。進学、就職、転職、結婚、恋愛…。選択の成否は、「後になってわかる」とよく言われる。後悔はしたくない。そのためには選んだ道を真摯に歩くしかない▼4月は、自らが選択した結論に踏み出す月。人生が順風満帆に進むことなどめったにない。誰しも壁にぶつかり、悩み、そこから抜け出す努力をする。それを繰り返し、社会人として「認知」されていく▼今を生きるのは自分。後に「正しい選択だった」と思えるかどうかは、運命ではなく、直面する課題にいかに真剣に向き合ったか、だ。 (10/04/17)




  「春に3日の晴れなし」。今年は寒と暖の繰り返しで、桜もつぼみのまま戸惑った▼都心の桜が満開と聞き、3日その下を歩いた。混雑が予想される九段下駅は避け、半蔵門駅からイギリス大使館前をへて千鳥ヶ淵へ▼緑道は人であふれんばかりで、車道をコーンで仕切り歩道を広げていた▼靖国神社、飯田橋駅前へ出て、外堀の桜並木を四ツ谷駅まで。途中、日本武道館で入学式を終えたばかりの新入学生の移動の群れに紛れ込んだ。不安と希望の入り交じった表情だが、明るい未来を祈りたい▼この一帯は、行楽地としてではなく都市景観を考慮して桜が植樹されたせいだろう、楚々とした花見の楽しめる場所だ。ほとんどがソメイヨシノ。その魅力は、枝に残骸を付けることなく、美しい花びらのままに散るはかなさ。日本人特有の無常観をそそるのかもしれない▼船橋周辺の桜も今週半ばに満開。この週末、もう少し楽しみたいが…。 (10/04/10)


 幕末から明治にかけての時代の変化は著しい。坂本龍馬が暗殺されたのは慶応3年(1867)12月。その5ヵ月後に、船橋で戦争があった▼慶応4年4月3日のこと。八幡や馬込沢で勃発した戦闘は、市川、金杉、夏見などに広がり、最後は海神で官軍が勝利した▼戊辰戦争の局地戦で、戦死者は30数名とされているが、船橋では800軒近くが消失し、中心街は灰燼に帰した▼ここで示された戦いぶりが、房総諸藩を官軍の味方に一変させた。142年前、時代転換の画期となった出来事がこの船橋周辺で繰り広げられたのだ▼正確には閏4月3日。つまりこの年は4月が2回あった。9月8日に明治改元となる▼鎖国や主従関係といった社会に耐えられなくなった人々が異を唱え、世の中が動き始めた時代のこと▼今、幕末が注目されるのは、社会が変化を求めるせいか。どの方向に向かうか、今を生きている私たちの選択が、後の世で評価されることになる。(10/04/03)


  春は街路の風景が日々変化する。梅、水仙、雪柳、辛夷、白木蓮、連翹、杏…と次々に開花。そして桜の季節がやってきた▼聞くところによると、この50年間で、ソメイヨシノの開花が全国平均5日早まっているという。ところが、九州南部では、開花が遅くなる傾向にあるらしい▼桜は、7月頃に翌年の花芽を成形し休眠に入る。夏らしい気温なら多くの花芽を付け、冷夏だと少ない▼花芽は冬の低温にさらされると「寒くて寝てられねえ」と休眠からさめる。休眠打破という。一定の寒さが必要なのだが、九州南部では80年代終わりごろから、真冬の平均気温が上昇傾向にあるという。寒さを感じない花芽は「いい心地」とついつい寝過ごしてしまうようだ▼このまま温暖化が進むと将来、ソメイヨシノが咲かない地域が出てくるということになるのだろうか▼桜の下で、今ある自然の有難さと、その将来についてもちょっぴり考えてみたい。(10/03/27)


 機能優先社会は、便利で効率がよいが、その分味気ない▼昨今の大学入試の合格発表は、ホームページで知らせるのが主流だそう▼合格掲示板の前で抱き合って喜ぶ。かなわなければ、重い足取りでその場から立ち去る。そこにある悲喜こもごもの風景は、人生の一ページ▼そして、見に行けない受験生には電報が送られた。有名なのは早稲田大の「サクラサク」。全国には地域の特色を生かした電文がいっぱい▼千葉大は「ナノハナサキミダレキミヲマツ」、不合格は「ナリタクウコウキリフカシ」。ユーモラスなのは大阪大歯学部「ニュウシハエル」(乳歯=入試生える)。ほかにも「クジラガツレタ」(高知)、「オチャカオル」(お茶の水女子)、「ナマハゲカンゲイスル」(秋田)…▼東京大のように、学内掲示にこだわる大学もまだある▼人生の節目には液晶画面より、臨場感の中で立ち会いたい。そう思うのは筆者が時代遅れのせいだろうか。(10/03/20)


 新緑や紅葉を追って、地域ごとに順番に5連休にするという政府案が話題になっている。日本を五つのブロックにわけ、春と秋の2回、週末を絡めて連休にする案だ▼連休が分散することで、高速道路などの渋滞が減り、ホテルや飛行機も安く利用できると予測する▼大歓迎は観光地だろう。安定した雇用が生まれ、サービスの質の向上も期待される。観光に限らず、多くの分野で潜在需要が起こる可能性も秘める▼地域ごとに休みが違うことで、工場を全国展開する企業では仕事に支障が出かねない―など課題も多い。スタートして出てくる弊害もあるかもしれない▼新しいことには、課題や困難はつきもの。こうした制度改正が閉塞感から抜け出す契機になることもある▼これまでのシステムは、全国一斉休暇という制度の下でつくられた。「地域別5連休」になったらなったで、新しい工夫が生まれるのではないか。やってみる価値はありそうだ。(10/03/14)



  三寒四温とはよく言ったもの。今週は寒と温を繰り返した▼生理学的には、人の交感神経は寒いときに緊張する。その反対に、夏には副交感神経が緊張し汗をかく。哺乳類は、副交感神経の緊張時に多くの栄養を蓄えて冬に消費するという▼きょう6日は二十四節気の啓蟄。虫が動き出す自然界と同じく、人の体も春を迎える準備を始める。冬の間静かだった体内には、ホルモン代謝の変化が起こり、肝機能の活動が活発化する。代謝が順調なら、気力は満ち、就職、新学期、職場の異動など春の変化にもスムーズに対応する。ところが現代は、陽気とは裏腹に、イライラ、不眠、アレルギーなど不調が顔を出す時期ともなっている▼「啓蟄を銜えて雀飛びにけり」(川端茅舎)。地面に下りて土をほじくっていた雀が虫をくわえて飛び立った。雀の素早い動きが、春の到来を告げる。季節の変化に少し目を向ければ、不調もどこかへ吹き飛ばないか。
(10/03/06)



  氷の上で石を滑らす競技にこれほど興奮するとは。バンクーバー五輪カーリング。準決勝進出はかなわなかったが、日本チームの戦いぶりは、カーリングの楽しさを伝えるに十分な活躍。ダブルテイクアウト、カム・アラウンドなどの用語が普通になった▼船橋ゆかりの選手たちの活躍にも拍手。3歳まで船橋で暮らしたというモーグルの遠藤尚選手。エアの大技を見せる果敢な攻めで男子初の入賞を果した。フィギァスケートペア、ロシア代表の川口悠子選手は市船橋高出身。惜しくもメダルは逸したが、挑戦する姿勢に心打たれた▼「重要なのは成功することではなく努力すること。勝利者になったかではなく、よく戦ったかどうかだ」。選手たちの活躍を見て、近代五輪の父、クーベルタンの言葉を改めてかみしめる▼バンクーバーでは、80年前に日本から寄贈された桜が、例年より1ヵ月早く咲き始めたという。今週は10度を上回る日が増えた。五輪に夢中になっていたら、日本の春もいつの間にかそこに来ていた。
(10/02/27)


  津田沼パルコにあるテアトルシネパークが今月で閉館する▼話題作だけではなく、ミニシアター系の隠れた名作を上映し、「通」の映画ファンに指示された▼全国に映画館が出来始めたのは1940年代終り頃から。しかし、テレビの台頭で、70年代には地方のほとんどの映画館が姿を消し、映画産業も斜陽に入った▼テレビと映画は異なる映像文化だと人々が気付くと、映画は再び息を吹き返した。そして現在のシネコンブーム▼その途中で頑張っていたのが、テアトルシネパークのようなショッピングビルの中の映画館。80年代、「買い物ついでに楽しめる」新たな娯楽の提案だった▼こんな映画があった。30年ぶりに故郷に帰った主人公。村を出る前、映写技師として働いていた映画館は既に閉館していた。テレビのせいだと村人はいう▼映画のタイトルは「ニュー・シネマ・パラダイス」。テアトルシネパークがクロージング上映(3面に詳細)に選んだ。粋な閉館だ。(10/02/20)



  カーリング日本代表、チーム青森の本橋麻里選手のショットの瞬間、そのフォームは、肩を頂点に後方に伸びた足とリリースされた腕が二等辺三角形をなす美しさだ▼冬季五輪競技の数種目を分析したNHK「アインシュタインの眼」を興味深くみた。カーリングのようなバランスを要求される種目、スキージャンプでの踏み切りのタイミング…▼科学で解き明かされる21世紀のスポーツ。ウェアの開発、競技に合った身体のバランスや筋肉の使い方など、微細に分析される▼陸上や水泳は少なくとも8人で競うが、スピードスケートやスキーなどのウインタースポーツは単独か2人。いかに科学の時代とはいえ、戦うのは生身の人間。己に克ち、いかにベストのパフォーマンスに近づけるかが勝敗を左右する▼科学を駆使し挑む人間の限界。世界のトップアスリートたちが競演するバンクーバー五輪が、日本時間のきょう開幕する。(10/02/13)



  本棚に1980年4月号の『中央公論』がある。雑誌を長年、本棚に置くことはあまりないが、それは特別。隠遁生活中のJ・D・サリンジャー氏に会いに行ったカナダの記者の記事が載っている▼そのサリンジャー氏が亡くなった。91歳。1951年出版の『ライ麦畑でつかまえて』は世界中の若者に読まれ、時代を超えたベストセラーといわれる▼53年以後、田舎に居を構え、報道人はおろか誰にも会うことなく発言することもなかった▼それだけに、件の記者の出会いは貴重だった。当時59歳だったサリンジャー氏の言葉を、記者は、『ライ麦』にあるフレーズと照らしながら、隠遁の理由らしき答えを導き出そうとする。そこに確実な答えがあるわけではないが、そのやりとりは、ライ麦の主人公・ホールデンの繊細さに通じるような気がして興味深く読めた▼03年に原題『キャッチャー・インザ・ライ』のタイトルで新訳した作家の村上春樹さんは『訳者解説』で書いている。「この50年ばかりの間に『キャッチャー』を読んだ多くの青年たちが『自分は孤独ではないんだ』と感じたという事実だ。それは『偉大な達成』という以外の何ものでもないだろう」と。(10/02/06)



  イワシの大群を追うイルカの群れ、それを待ち構えるカモメ、最後はクジラも加わり、海面は4者乱れての大バトルが展開する。「生きる」ことに執念を燃やすその世界は、一見残酷に映るが、おそらく長い間繰り返されてきた地球の「当たり前」の営みだろう▼映画「オーシャンズ」(ジャック・ペラン&ジャック・クルーゾー監督)が公開中だ。イルカ回遊シーンは、小型ヘリにカメラを搭載してのリモコン操作という。他にも、魚たちの動きを克明に伝える特殊な機器を駆使した▼シーンの多くは海中。臨場感あふれる音響が水音を拾い、観る方も海中を彷徨っているかのような不思議な感覚。カニが口や手足を動かす音までも忠実に展開する▼そうした「当たり前」の営みが繰り返されるうちはよかった。ここに来て急速にその環境が変化し始めた北極。セイウチ親子が海中で戯れる姿が微笑ましい。そんなシーンが永遠に続くことを願って映画はエンディングとなる。(10/01/30)



 

今月27日、昭和基地から初めてとなる「南極授業」が行われる。この画期的な試みを体験するのは習志野市立大久保小学校の子どもたち。第51次観測隊に同行した、同校教諭の長井秀子さんが、衛星回線を使い南極からの授業を行う▼小学生の頃に白夜にあこがれ、南極行きを夢見るようになったという長井さん。「南極から授業する先生募集」の新聞記事に目が留まり応募。奈良県の高校教諭とともに選ばれた▼南極は「宇宙に開かれた最後の窓」といわれ、日本は、欧州、米国、中国などと天体観測を競っている。日本が目指すのは南極最大級の天文台建設。今回の観測隊がその実質的スタートとなる。観測が始まれば、宇宙初期の銀河の姿が見える可能性もあるという、夢いっぱいの話だ▼出発前、子どもたちの「観測隊のごはんやお風呂はどうするの」という質問に感激していた長井さん。子どもたちとの現地からのやり取りが楽しみだ。



  年が改まるとすべての魂が生まれ変わる。日本人は昔からそう考えてきた。魂を持ってくるのが「歳神」で、正月は一斉に一つ歳をとった。数え年だ。地球は太陽の周りを1年かけて一周する。出発点に立ってこれからの1年が始まる。なるほど、昔の人のいう「新たな魂が始まる正月」に納得▼その穏やかだった三が日から早くも2週間が経とうとしている。5日が寒の入り、20日が大寒。「きびきびと万物寒に入りにけり」(富安風生)の歌そのままに、今週に入って本格的な寒波がやってきた▼暖房の部屋でパソコンに向かって仕事していると、季節との交渉なしに時が過ぎていく時代。だからこそ、暦やカレンダーやに記された二十四節気が貴重に思えてくる。便利さの中で失いつつある季節感。生活にも乾きを感じる人が多く、四季の移ろいへの情緒に癒しを求める。とりわけ厳しい冬だが、鍋か湯どうふでも囲めば、寒中も“味”なもの。(10/01/16)



  今年の取材メモから▼オリジナルダンス「風の舞」を主宰する中村凉子さん。「こだわりを放つと、呼吸するように自然な踊りが生まれてきた。私は、地球という巨大なパズルの1ピースでしかない」▼世界を旅して子どもたちの笑顔を描き続けている黒木皇さん。「世界には、電気や水道がなくても笑顔の絶えない国がいっぱい。世界で一番笑顔が減っているのは日本ではないか」▼「仕事と子育てを両立する母親たちの力になりたい」とキャリアカウンセラーの菰田明子さん。「自分自身の気持ちが大切。仕事と子育ての両方を出来ることはすてきな選択」とエールを送る▼募金を呼びかけ、カンボジアに小学校を建設した元校長・柴田輝雄さん。「大それたことをするつもりはない。ただ、学ぶ手伝いがしたかった」▼取材という役得でかなう出会い。小紙の若い記者たちは、まだ人生学びの段階。常に謙虚であれと願う。(09/12/19)


  今年の取材メモから▼オリーブオイルソムリエとして世界を駆ける料理人小暮剛さん(47)は、小学生対象の食育指導で「夢を追えば壁にぶつかる。ぶつかれば乗り越えることができる。乗り越えれば自信になる」▼サラリーマンからプロの尺八演奏家に転身した金野鈴道さん(59)。50歳からが人生の収穫期という五木寛之の『林住期』に感銘「まさに自分たちのこと。会社員だったからできる演奏がある」▼地球温暖化防止啓発紙芝居の語り部川合信也さん(67)「無理はしない。自分で何ができるか考え、できることをする」▼色鉛筆イラストレーター釘本緑さん。「やりたいことにやっと出会えた。自分の歩幅、自分のペースで歩きたい」▼海外ボランティアとしてチュニジアで起業家を養成した羽関総一郎さん(54)。現地の文化にほどよく溶け込む自らを知り「50歳を過ぎてからの自己発見。それが心地よかった」▼次号へ続く。(09/12/12)


今年の「新語・流行語大賞」は「政権交代」。それを実感させたのが、「事業仕分け」▼インターネットの中継をいくつか見た。テレビのニュース番組などで報じられる激しいやりとりばかりではなく、筆者が視聴した範囲では筋の通った理論が展開されていた。時折、官僚の歯がゆい答弁には、仕分け人が声を荒げる場面もあった▼無駄の洗い直しで、事業の「廃止」や、国庫に返納を求めた基金などの埋蔵金を合わせ、ひねり出した総額は1兆8千億円。約3千の国の事業のうち約450の事業が対象だったことを思えば大きな成果。予算削減以上に注目すべきは、その非効率な支出を生む数々の構造があぶり出されたことだ▼仕分けで出された結論に、様々な批判もある。しかし、予算の決まって行く過程を国民が知ることができるなんて大きな進歩。テレビの報道が数ヵ月にわたって、政治の話題に大きく時間を割くこともこれまではなかった。それが政権交代だった。(09/12/05)


 
  「坂の上の雲」(司馬遼太郎原作)のNHKドラマが明日から始まるという▼主人公の一人、秋山好古は船橋、習志野と縁が深い。秋山は騎兵第一旅団長として明治36年(1903)、習志野に着任。一家は薬園台の借家に住んだ▼その頃、旗艦「三笠」に乗った弟・真之への手紙に、自らの社会観をつづっている。「国家の衰退はつねに上流社会の腐敗より起こらないものはない。一家一族は国家の実利を挙げたならば、名利を放棄して、すみやかに閑居する必要がある」。名将中の名将といわれ人格者だった秋山。現代の政治家や官僚に、このような社会観があれば、「事業仕分け」などという面倒な作業は不必要だったろうに▼旅団の騎兵連隊が置かれた場所に続く京成大久保駅北口の商店街は、習志野市内でも最も早く栄えた。ドラマ放映を機に街の活性化を、と大久保商店街協同組合が数々の企画を打ち出している。地域の歴史を知ろうといった、地に足のついた企画に好感。今後もどのような企画が出てくるか楽しみだ。(09/11/28) 


 落語「時そば」は、5代目柳家小さんの十八番だった。麺をすするあのリアルな芸を見せられるにつけ「そば欲」?をそそられ、帰路は何としても蕎麦屋へ寄らざるをえなくなった▼弟子の1人がテレビで、生前のエピソードを語っていた。ある日、蕎麦屋へ入った小さん師匠。居合わせた客の目は、師匠に注がれたまま動かなかった▼新そばの季節になった。その、香りとのど越し。ズズズっと音を立てて食べるのが最高だ▼ところが昔は、下品と嫌われ、口をすぼめて食べていた時代もあったとか。それでも、新そばの晩秋から春先は特別に許された。なぜなら、微妙なそばの香りは舌を使って空気を攪拌させ、口から鼻へと増幅することで存分に堪能できる。「ズズズ」が理にかなっているのだ▼近辺にも美味しい蕎麦屋はあるが、この時期必ず、東京・神田にあるいずれかの老舗に足を運ぶ。週末、ちょっと足を延ばしてみようかな。(09/11/21) 


 寒気が増してきた早朝歩きは気持ちがよい。街路のイチョウやケヤキの葉が色付き、すでに落葉も始まった▼日によって散歩コースを変えるが、熟年の夫婦らしい2人連れの散歩が目立つようになった。 健康維持のためか▼歩けば歩くほど、脳の中でアルファ波が強くなっていくらしい。身体と脳が、歩いているのに慣れた状態を「ウオーキング・ハイ」と言うそうだ。「ハイ」は「high」。つまり気分が高まっている状態で、一種の陶酔状態。 筆者の場合、そこまで至った自覚症状はなく、もっぱら心のリフレッシュのための「スロー・ウオーキング」。 街なか歩きでも季節の変化を肌で感じられる豊かな時間だ▼それにしても季節の移ろいは早く、きょう7日は立冬▼「地玉子のぶっかけご飯今朝の冬」(笠正人)▼「今朝の冬」は季語で立冬の朝のこと。どこかで新鮮な玉子を手に入れ、新米のぶっかけご飯で冬に備えるとするか。(09/11/07


部屋の片付けを始めたのはよいが、ぱらりとめくった本の活字に目が行き、ついついその世界に入ってしまう、なんてことがよくある。「思わず夢中になりました」。今年の読書週間の標語を見て、そんなことを思った▼昔、家庭に本があまりなかった時代、買ってもらった一冊を繰り返し読んだ。それを「葦編三絶」という。葦編は綴じ紐のことで、三絶とは三度も擦り切れたという意味▼名文と呼ばれるものにくどい説明はない。 そこに生まれるのが行間。 行間を読むのに自ずと働くのが想像力。 白い行間はいかようにも解釈できる。 小説なら想像はふくらみ、 評論やコラムなら、 書き手の真意を読み取ろうとする。この無意識の「読み」の訓練が、 仕事や人生にも通じないか▼いい本かどうかは「読後ページを閉じ、目を上げて世界を見たとき、世界が1_変わっているかどうか…」とノンフィクション作家の佐野眞一氏▼この秋、いい本に出会いたい。27日から読書週間。(09/10/24)
 


「無駄」の尺度が難しい。第三者からは無駄に見えることも、その有効性は当事者でなければ理解できないこともある。そこに、 時間的経過を加えると、ますますやっかい。有効だと思ってやったことが、しばらく経つと、結果的に無駄だったということもしばしば▼視野を広く持つ意味で「俯瞰」という言葉がある。鳥の目になって、空から自分たちの地域や暮らしを眺めれば、必要なもの、不必要なもの、急ぐべきもの、そうでないもの…が見えてこないか▼政府による09年度補正予算見直しで、本県でも館山道4車線化事業凍結という。地元自治体から戸惑いの声が上がっている▼無駄な事業を削り、国が変わることを多くの人は望んでいた。しかし削られる事業が自分たちのこととなると、うなずくのが急に難しくなる▼無駄かそうでないか、線引きは難しい。政治家、役人、そして国民の「俯瞰の目」の質が試される時なのかもしれない。(09/10/17)


 すしネタ「江戸前」とは、東京湾で獲れた魚介類のこと。その江戸前の魚が、90年代以降減少しているという。深刻なのは、シャコやアナゴなど海底にすむ種類▼原因は、植物プランクトンの増殖による「貧酸素水塊」。過剰な増殖は赤潮を発生させ、魚介類が食べきれなくなったプランクトンは死骸となって海底へ。死骸をバクテリアが分解、海中の酸素を消費し貧酸素水塊を生み出す。酸素が少なければ、生きる魚介類の数にも限界がくる▼植物プランクトンの過剰な増殖は、特に河口付近で顕著という。工場廃水や生活排水はリンやチッソの栄養塩を含みプランクトンを増殖させる▼対策として、海中で酸素を供給するアマモ場の再生など市民参加で行われているがまだ小さな試みに過ぎない。まずは、湾岸に住む私たちが海の現状を知り、感じるところから始めたい。本日10日、船橋漁港で開かれる「港まつり」。遊び心で海のことを考えようというイベント。魚介類販売、屋台、渡船、船上舞台、ヨット体験など、海を間近に感じる企画が目白押しだ。(09/10/10)


  きょう3日は中秋の名月。旧暦8月15日のこと。月が最も美しいとされる日だが、実は、満月はあす4日だ。この誤差は旧暦の1日(ついたち)が「新月となる瞬間を含んだ日」といった決め方や月齢、月の軌道などで起こる「ずれ」だという。実際どうか、十五夜と十六夜を見比べるのも面白い▼月は、地球の周囲を24・8時間の周期で回る。潮の干満のリズムだ▼ある実験で、海のカキを採取し実験室の水槽で飼育したところ、カキは満潮で殻を開き、干潮になると閉じた。生命体が、自然と同調したリズムの中で動いている証しだ▼人間も、農作物の種まきや収穫は、太陰暦をもとに月の周期に同調して活動していた。人間という生命体もそれが理にかなっていたのだろう▼「ほぼ満月」の「旧暦8月15日の月」を「十五夜の月」という行事として定着させた。伝統とは、そうした「ほぼ…」を認める寛容さの中で育まれるものなのかもしれない。
(09/10/03)



 

 遺跡からはがし取ったというヤマトシジミの貝層の断面が、当時の生活を様々に想像させる。飛ノ台史跡公園博物館で開催中の、県内最古級の「取掛西貝塚」からの発掘物の展示が興味深い。約1万年前の縄文早期の遺跡で、発掘場所は飯山満町から米ケ崎辺り。現在まで、竪穴式住居10軒と土坑9基が見つかっている▼ヤマトシジミは、海水と淡水が混じりあう汽水域に生息する。同貝塚付近の地形から生息域を推測するのも面白い▼興味を引くのは、同貝塚でまとまって出土したという大浦山式土器。主に神奈川県三浦半島で発見されていたもので、調査員によると「海を隔て何らかの交流があったのでは」という。『縄文人の世界』(小林達雄・朝日選書)によると、縄文人は優れた航海者で、丸木舟で本州から伊豆諸島へ移住していたという。とすれば、三浦半島から船橋へ、東京湾を航海するくらい朝飯前だったのかも▼10月4日まで、初公開の貴重な資料が展示されている。(09/09/26)


 厚労省の統計で今年、100歳以上が4万人を突破するそうだ▼日本の平均寿命は世界一。平均寿命は生存期間のモノサシだが、「健やかに過ごせる人生の長さ」を測る健康寿命というのがある。04年WHOの調査で、日本人の健康寿命は75・0歳で、これも世界一。伝統的な低脂肪食で心疾患が少ないためという。しかし、その食生活も変化しており、今後は伸び悩むとも▼『のばそう健康寿命』(辻一郎・岩波新書)によると、「加齢とともに心身の機能が低下するというのは誤解で、個人差がある」という。80代で健康に生活している人に共通するのは「気分転換の活動」「新聞を読む」「外出する」などアクティブな暮らしだそうだ▼高齢者の健康度は、医療や介護の負担に関係する。高齢社会に求められるのは、健康寿命を伸ばす施策。個人の養生はもちろん、安心して散策できる道路や、地域活動に気軽に参加できる環境づくりなど行政の施策は欠かせない。(09/09/19)



 さんま焼くけむりのなかの一人かな(久保田万太郎)。煙の出所は庭先に置いた七輪か。家庭では今、サンマ焼きはもっぱらオーブン。この句には、昭和の風景が見えてくる▼秋刀魚は昔から日本人が好んだ大衆魚。最近は、トロサンマとか日帰りサンマとか、ブランド化を図っているとか▼サンマは、8〜9月に、千島列島から北海道方面に来遊する。この後、産卵のために本州沿いに南下するが、その南下前のサンマは、たっぷり脂が乗り切った状態。それを船上で箱詰めし高鮮度のまま直送するのがブランド化。流通の進歩がもたらすグルメだ▼南下した秋刀魚は、10月には房総沖まで達する。まだ、産卵前で、ブランド魚ほどではなくても、脂が乗り味はよい。サンマの「旬」はここまで▼ひと月は、上旬、中旬、下旬と分けられる。「旬」とは10日程度のあっという間。新サンマ、新米、新ソバ、新アサリ…、「旬」を楽しむ食欲の秋になった。(09/09/12)


 選挙中、麻生さんは「安心実現」をうたった。有権者はよーく考えてみた。「安心じゃない国にしたのは誰?」▼衆院選での民主党圧勝は政党支持というより、有権者の、それまでの政治に対する怒りだった▼ただ、今回の選挙結果を単なるフラストレーションの表現手段だけに終わらせてはなるまい▼マニフェストで違いが鮮明だったのが、直接給付と間接支援。民主党は子育て支援など家計に直接渡す方式で、自民党は業界ごとに支援して効果を狙う方式。自民党の間接支援方式は高度成長期には機能したが、その陰で政官業が癒着し、ムダや利権がはびこった。それを排除したいとする民主党に、有権者は「そうだ」といった▼政権を得てやるべきは、もちろん公約の実現。そしてその政策に効力がなかったら有権者は、次の選挙の機会に新たな審判を下すだろう。政治に緊張感が出てくるなら何かが変わる。今回の選挙で有権者は、そんな期待を1票に込めた。(09/09/05)



  前回は05年9月11日だったから、今回はほぼ4年ぶりの総選挙。任期満了選挙に等しい▼県内の有権者は504万9969人で前回より13万人増えた。小選挙区4区は船橋市単独で48万9437人。この有権者数は県内13選挙区中の最多だ▼各党がマニフェストを掲げて支持を訴える。有権者からは、掲げた政策が実現可能かどうかの厳しい視線が注がれる。私たち有権者はその中身を吟味し、納得した候補者に投票することになる。つまり、私たちの吟味する能力も試されることになる▼有権者こそ、国の政治の主人公。「政治に期待できない」と嘆くだけでは、何も改善されない。民主主義社会における国民の最大の政治的権利は投票権。自らの意思を、投票という行為を通じて政治に反映させたい▼後に「歴史的な転換点だった」となるかもしれない。その場面にはぜひ参加しておきたい。投票日までほぼ1週間。じっくり考えて…。(09/08/22)


 お盆は、正式に盂蘭盆会。今ある自分は、先祖のお陰とする先祖崇拝の習わしだ。実家が地方なら、都会で働く会社員は休暇をとり帰省する。盆休みは昔、奉公人が盆と正月に休みをとって帰省した「薮入り」が習慣化した▼しかし、現代は、簡単に移動できない事情もある。先日、テレビのニュースで見た「お盆ビジネス」は現代ならでは▼「墓掃除代行」は、帰省できない持ち主に代わって墓を掃除し盆に備えるというもの。お盆までは予約でいっぱいだそうだ▼「インターネットのお墓参り」というのもあった。体が不自由になった人のために、寺に安置されたお墓を撮影し送信するシステム。これなら自宅にいながらお参りできる▼家系が一カ所で住む時代ではないし、人それぞれに事情もある。それでも先祖への供養の心は変わることなく「何とかしてお参りしたい」。お盆ビジネスは、そうした日本人の信心深さの表れ▼今日だけでも、お盆の意味を考えてみよう。 (09/08/15)


 「8・30衆院選」は、政権選択選挙という。どの党が政権を取ろうと、国民の気持ちはおそらく、政策の実行を見極める「暫定政権」という位置づけではないか。もう、国民の目はごまかせない。実行がなければ、すぐに、次の政権選択がやってくる▼国の借金は800兆円。毎年80兆円規模の予算に税収は50兆円。どこかで、増税しなければならないことはだれもが分かっている。これまでも、財政難などを理由に税を増やしてきたが、ろくな使い方はしてこなかった。だから「負担増の前に行うべきことがあるはず」というのが国民の気持ちだ▼困っている人は多いし、お金を回すべきところは多い。行くべきところに行く、目配りの利いた政治なら、「増税は許せる」と大方の人は考えている。それが「託せる」政権だ▼言うまでもなく、国家は税金で成り立つ。お金の使われ方を監視できる行政システムをつくれるのはどこか。その選択が今度の選挙だ▼これまで、おまかせ民主主義をやり過ごしてきた有権者にも責任はある。国民にとっても自分の将来がかかる選挙だ。 (09/08/08)



  最近気づいたこと▼先日、パソコンが不具合になった。購入したのは9年前。途中、OSをXPにアップしてここまで引っ張ってきたが、、どうやら酷使に音をあげたようだ▼買い換えたのはよいが、数日後、社会保険事務所から算定基礎届のフロッピーデスク(FD)が送られてきた。そうか、最新機種にはFD用の装置はない。結局は、電気店で外付け装置を求めるはめになった。いまどき、FDとは。なんとズレた役所か▼電気店に入って目立つのが「エコポイント」の文字。冷蔵庫、エアコン、地デジ対応テレビの前にポイント数が掲げてある。1ポイント1円相当。たまると、商品券や地域産品などと交換できるらしい▼待てよ、買い換えたら、それまで使っていた家電はゴミになる。これでは環境に負荷をかけることになりはしないか。エコカー減税だって、新車に替り廃車になった車は…▼やれ買え、それ買え。この国のエコって、もしかして、エコノミー(経済)のエコ…。 (09/08/01)


本紙のインタビューに「各国から集まる生き物好きとの交流が楽しみ。金メダルを獲りたい」と答えた、県船橋高の大月亮太さん。その言葉通り、先日、つくば市で開催された「第20回国際生物学オリンピック」で、日本人初の金メダルに輝いた▼世界56カ国・地域から221人の高校生が参加。上位23人に金メダルが与えられる大会での快挙だ▼大月さんは、幼少から「虫の動きに」興味を抱いた。小学生のとき、家族で浦安市に転居してきた。目前にある東京湾三番瀬。そこに生息するカニやカレイなどの稚魚の動きに大月さんの目が輝いたのは言うまでもない▼「(金を)期待していた」と県船橋高生物部の石井規雄顧問。難関の実験では、世界初という「スミレのDNA」研究が奏功した。「日本では大学院レベルの研究」(同顧問)という▼自身の熱心さ、三番瀬という生物多様性の環境、石井教諭との出会い。快挙には確かな背景がある。(09/07/25)



  小学五年生の時の、ある土曜日の午後だった。市内の草野球の決勝の日で、試合場には多くの人が詰めかけていた。当時は、それもりっぱな娯楽だった▼試合途中から、辺りがにわかに暗くなってきた。次第に暗さは増し、肌にはそれまでとは違う温度の差を感じた。生まれて初めて体感した日食。雲が太陽を隠す状況とは明らかに違う不思議な感覚だった▼準備のいい仲間の一人が持っていた遮光板で日食の変化を交替で見た。試合がどうだったか記憶にないが、50年以上経った今も、日食による肌の感覚だけは覚えている▼記録を見ると、その日は1958年4月19日。私が観察した長崎県では、12時52分最大食分88%とある▼7月22日は皆既日食。皆既食帯はトカラ列島など一部の島々だが、部分日食なら観察できる。船橋周辺では9時55分に始まり、12時30分に終わる。最大食分は74%で11時13分。一生に何度も出会うことない天体ショー。くれぐれも、目を保護する遮光板などの準備は怠りなく。晴れるとよいが。(09/07/18)


梅雨が明ければ観光シーズン。とりわけ房総半島は夏の人気観光地だ▼裏付ける数字がある。07年国交省「宿泊旅行統計調査」、年間の宿泊者の数が、北海道、東京、大阪に次いで4位▼07年の千葉県観光入込調査によると、県内の観光客総数は約1億3千万人。旅行総消費金額は4千6百億円。施設では、東京ディズニーランドがトップで、成田山新勝寺、海ほたるパーキングと続く▼本紙エリアで目ぼしい集客が「ふなばし市民まつり」。行事・イベントでは05年まで県内トップだった。ここにきて3位とはいえ依然、人気行事であることに変わりない。今回のトップ記事でも紹介した通り、祭りを盛り上げようと、若手経営者たちの元気がいい▼ばか面、よさこい、御輿…そんな、各地の祭りをごった煮にしたような寛容さが、新旧住民の融合をたやすくし、エネルギッシュなイベントへ発展させてきた。今年も24日の「めいど・いん・ふなばし」を皮切りに熱い夏が始まる。 (09/07/11)


東京湾三番瀬産の新名物として注目されている貝がある。本紙が、昨年5月10日号で報じたホンビノスガイ。味はアサリより濃厚で、食感はぷりぷり、ワイン蒸しなどによく合うという。北米原産の二枚貝で、外国船舶が北米で取水したバラスト水に混入し定着したものと考えられている▼三番瀬の特産といえばアサリだが、近年、青潮により大量が窒息死し不漁が続いている。その点、ホンビノスガイは青潮に強く収穫が安定。船橋漁港では08年度、177dが水揚げされた。多くは東京・築地市場に行くが、一部は船橋中央卸売市場でも取引されている▼同市場で仕入れ、メニューに取り入れているのが北習志野駅近くの「Cafe Azzurro」(рS06・5367)。人気は「ホンビノスガイのイタリアンソテー」だという▼今は、知名度が低いが、スーパーや鮮魚店で広く出回るようになれば、船橋の新たな産物として期待が高まる。(09/07/04)


「市の花」というだけあって、公園や通りなど習志野市内にはアジサイが多い。特に鮮やかに感じるのが、JR津田沼駅南口、モリシア前のアジサイ。斜面の道沿いに植えられた青、白、ピンク、紫…の花々が光彩を放つのは、周囲にコンクリートの建造物が多いせいだろう。それでも、違和感なく風景に溶け込んでいる。「私きれいでしょう」などとでしゃばらず、進む季節に合わせるように色を変え、雨にも晴れにもよく似合う、そんな寛容さがこの花にはある▼アジサイは、土壌が酸性だと青くなり、アルカリ性だと赤くなるとよくいわれる。日本のアジサイは、本来は青だったとか。18世紀にヨーロッパに渡り改良され西洋アジサイとなって逆輸入された。よく見かけるのが花の形が手毬型のもの。原種は房総や伊豆に自生するガクアジサイだという▼とりわけ県内にはアジサイの名所が多い。その一つ大多喜町の麻綿原高原では、これからが見ごろとなる。(09/06/27)


31歳、全国最年少の市長誕生。先週の千葉市長選は、与野党対立の候補が出馬したこともあり全国的な注目を集めた▼それから1週間後となる船橋市長選。県内では千葉市に次ぐ都市というのに、その首長選びの注目度が低い▼13日現在の有権者数は48万6884人。前回の05年より約2万1千人増えた。増えたのは、新たに選挙権を得た人と転居してきた住民。地方政治に関心の薄い層だ▼考えてみよう。自治体の首長は、市民の生活に最も身近な行政の舵取りをする人だ。その人を選ぶのに、他人の投票だけに委ねてよいものだろうか▼道路、医療、子育て、教育、福祉、環境など市民に直結する課題は山積している。誰に投票するか考えるのは、選挙デビューの若者も、新しく市民となった人も、今住んでいる街の事情を検証するよい機会▼注目度がどうであれ、首長選びはそこに住む人の責任。棄権だけは避けたい。投票日は明日21日。(09/06/13)
 



 

全国の交番などに届けられた「落し物」が08年の1年間で約17万件あったという警察庁の発表を新聞で読んだ。前年より36%増。1日5万点に近い。10年前の2倍だそうだ▼07年12月に遺失物法が49年ぶりに改正され、拾得物情報がインターネット上で検索できるようになった。ほかにも、携帯電話やカード類などの個人情報関連物件は落とし主が判明しなくても拾った人に渡さない―など。法も時代を映す▼08年の拾得物には、本来想定していなかったハンカチやポケットティッシュなどもあったという。法改正時のPRで「拾得物の速やかな届出」にも力を入れた効果とか。律儀な国民性か▼警視庁のデータでは、東京都内での昨年の拾得物届出数は約250万件。傘38万本、財布類23万個、携帯電話11万台などの順▼依然落し物代表は傘。雨がやむころは忘れられやすい運命か? 関東は10日に梅雨入り。傘の季節がやってきた。
(09/06/13)